天文学とキリスト教会
2022年6月21日は【夏至】、1年のうちで、北半球で太陽が最も高く、その力がピークに達する日です。
イタリアでは3月最終日曜日からサマータイムに移行して、時計の針を1時間進めています。そのためもあって、1年の中で一番日が長いこの時期は夜9:30頃まで夕方のような明るさです。
人間が自然の中に生きていた古代から、毎日新たに生まれ、そして沈んでは闇をもたらす太陽。日々繰り返される営みと、時間の経過やめぐる季節の概念を与える神秘性。そしてあらゆる生き物を育む生命力を与える無くてはならない存在として、世界各地で太陽を崇拝する信仰があったというのは想像に難くないですね。
天の父なる神と、その子イエス・キリストを信仰する一神教のキリスト教でも、イエス・キリスト=太陽と見なしてシンボル化・図像化された装飾モチーフがフィレンツェの教会でも見られます。
例 サンタ マリア ノヴェッラ教会 正面装飾 と 右: サンタ クローチェ教会 正面装飾
また、教会の建物内外には、天体観測するための機器・日時計などが取り付けられていることもあります。
キリスト教が発展・拡大していく過程で、土着の民間信仰や風習が融合・再解釈されて取り入れられていきました。キリスト教の核ともなる大事な儀式は、太陽の運行とも結びついています。
―12月25日 イエス・キリストの誕生は、昼間が最も短くなる【冬至】の直後、太陽がその光と力を徐々に取り戻し、世界を再び照らし出していく過程と重なります。
ー3月21日 【春分】 昼夜の長さが等しくなるこの日の後、最初の満月の次の日曜日が、人類を救うために犠牲となったイエス・キリストの復活の日です。
また、聖堂・教会は基本的に正面が西向き、キリストの十字架像がある本堂中央祭壇が東向きになるように建てられています。これも、ミサで十字架像を前に礼拝する際に、昇る太陽に向かって拝むことにつながっています。
フィレンツェ大聖堂には、夏至の太陽が正午・最も高い位置に達した時に床面の特定の位置(丸プレート)に太陽光が投影される仕掛けがあります。
現代の日常に定められている時間というのは、便宜的にとある地域(国ごとなど)全域で同じ時刻を使うようにしていますが、太陽の動きで見ると、太陽を見ている地点によってその高さ、頂点に達する(南中)時刻が違ってきます。ですので、ここでいう正午というのはフィレンツェの観測地点で太陽が真南(最も高い位置)に達した時=正午 ということになります。
サン ミニアート アル モンテ教会で【夏至の太陽光 観察イベント】
6月20日、フィレンツェで一番高いところにある教会、サン ミニアート アル モンテ教会で【夏至の太陽光を観察するイベント】に行ってきました!
夏至の日とその前後数日間、フィレンツェで太陽が真南にくる時、教会側面の窓から差し込む光が床面大理石モザイクのかに座のところにちょうど丸く投影されるのです!!!
サン ミニアート アル モンテ教会は 1013年に建設開始され、床面に大理石のモザイク装飾がつくられたのが1207年頃です。教会の正面入り口近くの床面には、12星座を表した見事なモザイクがあったのですが、この天文学的仕掛けについては忘れ去られていて、仕掛けの意味が再発見されたのはなんと2011年。資料も何も残っていなかったそうです。
800年前に作られた、天文学的仕掛け!!!
太陽光がなぜかに座を照らすのか?というのは、太陽がかに座に留まる”かに座の季節”が6月21日ー7月23日という関係です。かに座の期間はちょうど夏至の日から始まるのですね。
*太陽の1年間での見かけ上の通り道を黄道といい、この黄道上に みずがめ座・うお座・おひつじ座・おうし座・ふたご座・かに座・しし座・おとめ座・てんびん座・さそり座・いて座・やぎ座の12の星座が並んでいて、これらは”黄道12星座”と呼ばれます。星占いでは”黄道12宮”とも呼ばれています。皆様も、自分が何座かご存じですよね。太陽が1月から順にこの星座を通過しながら運行していくということです。
側壁にある窓から光が差し込み、全部で4つの丸い光が床面に投影されます。
この日、まず1つ目の光が床面に映ったのは13:49でした。
2つ目の光がかに座の近くに映って、ゆーっくり動いていきます。
かに座の上にピッタリ重なったのは13:55 でした。 (*動画は4倍速です☟
窓は縦長なのに、なぜ床に丸が投影されるのか?と質問しましたら、太陽光が窓の角に斜めに差し込むその時は、窓にはめ込まれた丸ガラスを通過する光が床面に投影される。窓に対して正面から太陽光があたると、床面には窓の形が映ることになる、だそうです。
建物と窓の構造、窓から差し込む光とその時間、それに完璧に一致するように計算して配置された床面の模様・・・
ただただ 昔の人はすごいな~~ と思ったひとときでした。
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